購買関連システムのオン・ボーディングを成功させるには?~支援サービスの種類と比較ポイント~
購買・調達NAVI
購買・調達業務におけるオン・ボーディングとは、新しく導入した各種購買関連システム の早期定着化を図る取り組みのことです。システムの利用率を高め、ユーザーが早期に使いこなせる状態を整えるための取り組みとして重要視されています。オン・ボーディングの重要性やそのメリットを整理した上で、オン・ボーディングを支援するソリューションの種類や直近のトレンドを解説していきます。
購買・調達業務におけるオン・ボーディングとは
オン・ボーディング(on-boarding)とは、自社のユーザーやサプライヤーがいち早くシステムやサービスの使い方や仕様を理解し、早期に自身の手でサービスを操作・利用できるように支援するプロセスをいいます。導入後の継続利用や利用率向上を促進し、定着化を図ることが目的です。そのため、購買部門だけでなく、システム部門や必要に応じて外部委託する等を含めて支援体制を構築する必要があります。
オン・ボーディングが重視される理由
オン・ボーディングが重視される背景には、社内外のユーザーの定着に課題を感じる企業が増えていることがあります。豊富な機能を持つ購買ソリューションを導入したものの、そのソリューションが使われなかったり、業務フローに慣れない状態が続けば、作業効率がスローダウンしたりなど弊害が生じかねません。ソリューションを導入して改革の目的を達成するために重要なのは、優れた機能を持つソリューションを選定・導入することに加えて、ユーザーのオンボーディング、つまり限りなく全てのユーザーにシステムを利用してもらうことです。
そのため、オン・ボーディングの取り組みは従来以上に重要になっています。従来、ユーザーが新しいシステムに適応するための支援方法は、操作マニュアルの配布やユーザートレーニング、ヘルプデスクが一般的でした。しかし、いち早く新しいシステムやツールに慣れてパフォーマンスを発揮するようになるには、それらだけでは十分とはいえません。導入後のユーザーへの継続的なサポートが必要です。オン・ボーディングでは、継続的な取り組みを通じて新たに導入されるシステムの定着化を図り、利用ユーザー全体のパフォーマンス向上につなげます。そのため、自社ユーザーだけでなく、サプライヤー等の社外ユーザーもオンボーディングの対象になります。
オン・ボーディングに取り組むメリット
オン・ボーディングに取り組むメリットを以下に整理しました。
システムの早期定着化
社内外のユーザーがスムーズに利用できるようにすることで、システム本来の機能を発揮しやすくなり、結果として早期定着化が期待できます。また、ユーザーからの様々な問い合わせに対応できるヘルプデスクなどを設置することで、不満解消やシステムへの信頼性の向上につながり、利用率の向上に寄与します。
導入コストや利用コストの無駄をなくす
せっかくシステムを導入しても利用率が低い状態が続けば、利用料が無駄になってしまい、いずれ、そのシステムが解約されてしまうのは明白です。そうなると、結局従来の購買業務フローに戻ってしまい、業務効率化につながらないというケースが生じます。場合によっては、再び他のシステムの検討や導入を行わなくてはならず、余分な導入コストも生じてしまいます。オン・ボーディングによって利用率が上昇すれば、こういった無駄をなくすことができます。
購買・調達業務のオン・ボーディングを支援するソリューションの種類
オン・ボーディングの重要性を認識していても、自社にリソースやノウハウが不足しているために十分な施策を行えないケースもあります。また、オン・ボーディングでは、施策を作成し、実行する購買担当者やシステム部門の負荷が高くなりがちです。そこで活用したいのが、オン・ボーディングを支援するソリューションです。しかし、一口にオン・ボーディングのソリューションと言っても、その種類やタイプはさまざまです。ここでは、ソリューションの種類や特徴をご紹介します。
操作マニュアル作成
ユーザーが新しいシステムへの理解を深めたり、スムーズなシステム利用をサポートするための方法として、最も一般的なものが操作マニュアルの作成・配布です。しかしながら、ユーザーからは、「操作マニュアルが分かりにくい」「操作マニュアルにはない画面に遷移した」「操作マニュアルがどこにあるか分からない」といった不満がよく挙げられ、とりわけ、システム導入直後は問い合わせが殺到してしまうケースも多いです。これらの課題に対応するために重要となるのが、ユーザーの読みやすさ、使いやすさ等に配慮した分かりやすいマニュアルの作成です。それに加えて、ユーザーの疑問を解決するために、よくある質問集を作成し、検索・閲覧できるようにしたり、ユーザーからの問い合わせへのフォローアップを行える問合せ窓口の設置や継続的なサポート体制も必要になります。
FAQシステム
よくある質問とその回答を作成・蓄積して、ユーザー自身で検索できるようにする「FAQシステム」の活用も効果的です。FAQシステムの具体的な機能としては、FAQコンテンツの作成機能、FAQを探すための検索機能、FAQコンテンツのアンケート・分析機能などがあります。ユーザーが問い合わせに至る前に自己解決できるため、問合せ件数の削減に繋がり、購買担当者やシステム部門の負荷が軽減されます。扱い慣れたエクセルでFAQを作成することもできますが、「回答が探しにくい」「同時編集ができない」「文章での説明に限定される」「内容が増えるほどファイルが重くなる」など様々なデメリットがあるため、ユーザーからの問い合わせの削減を重視する場合、やはりエクセルよりもFAQシステムの方が検索性やコンテンツの拡充性など、様々な面で優れています。
チャットボット
チャットボットとは、チャットツールを用いて、ユーザーからの問い合わせにスピーディーに対応できるよう支援するソリューションです。チャットボットにユーザーからよく寄せられる問い合わせ内容とその回答を設定しておけば自動で回答してくれるので、ユーザーの自己解決を促せるというメリットがあります。また、社内マニュアルやFAQページに比べて即時性が高く、利用者もすぐに知りたい情報にたどり着けるという利点もあります。ユーザーから寄せられる問い合わせをチャットボットに任せれば、調達・購買担当者やシステム部門の業務負担が軽減され、コア業務に集中する時間が確保できます。しかしながら、チャットボットでは提示できる情報に限りがあるため、問い合わせの件数が多かったり、問い合わせの種類が多岐に渡る場合、より多くの情報量(回答)を提示できるFAQシステムも活用した方がユーザーの問題解決率は高まります。
具体的には、
・購買業務フローの種類が様々あり、その種類に応じた問い合わせ対応が必要
・社内外のユーザーに応じた問い合わせ対応が必要
・ヘルプデスクの担当者向けに使いたい
という場合は、間違いなくFAQシステムの方が適切です。
問い合わせ管理ツール
問い合わせ管理ツールとは、ヘルプデスクに寄せられる問い合わせを一括管理できるツールです。電話やメール、チャットなどさまざまなチャネルからの問い合わせを一元的に管理できます。問い合わせを「チケット」という形でステータス管理できる機能もあるため、「チケット管理システム」と呼ばれることもあります。問い合わせ毎にチケットを発行し、必要に応じてそのチケットを別部門に手渡すといった方法で管理し、対応漏れを防ぐことができます。よくある質問に対して自動返信する機能を利用するなどして、問い合わせの業務の一部を自動化することもでき、また業務を平準化したり、ユーザー対応時間を分析したりなど、ヘルプデスク運営の効率化に役立つ機能をもつサービスもあります。システム導入後に生じる、「問い合わせ対応時間の削減」や「問い合わせ対応品質の向上」などの課題を解決するために、多くの企業で問い合わせ管理ツールが活用されています。
デジタルアダプションツール
ユーザーのシステム操作に合わせて画面上に操作方法を順に表示する「ガイド」や、入力箇所にカーソルを重ね合わせた際に入力ルールをポップアップ表示で簡単に説明する「ツールチップ」などのナビゲーションをリアルタイム表示できる「デジタルアダプションツール」の活用も広がっています。これにより、必要なタイミングで必要な情報を見れるため、従来型の操作マニュアルで生じていた「操作マニュアルがどこにあるか分からない」「操作マニュアルのどこを見ればいいか分からない」といった問題が解消されます。また、新機能の導入や業務フローの変更が生じても、ユーザーへのスムーズな展開が可能です。しかしながら、ツールの仕様上、対象は基本的に社内ユーザーに限定されてしまいます(サプライヤーなどの社外ユーザーは対象外)。
購買・調達業務のオン・ボーディング支援ソリューションの直近トレンド
これまでのオン・ボーディングでは、新しく導入されたシステムが早期に組織に定着するよう、操作マニュアルの配布やユーザートレーニング、ヘルプデスク等のアナログ的なソリューションによるユーザーサポートが中心でした。しかし、定着率を高めるうえでは、それらサポートだけでは十分といえず、適切なソリューションを活用して、いち早くシステムの定着化を図る必要があります。これを受けて、昨今のオン・ボーディング支援のソリューションでは、個々のユーザーの利便性向上に資するツールが多く活用されています。
また、ユーザーサポートにおいては、ヘルプデスク担当者のスキルによって、問合せに対する回答のスピードや質がばらつきがちです。対応品質の均一化を図るソリューションや他の社内メンバーとのコラボレーション機能など、ユーザーをサポートする側が抱える課題に着目したソリューションが拡充されています。
購買・調達業務のオン・ボーディングを支援するソリューションの選び方・比較ポイント
オン・ボーディングを支援するソリューションには、さまざまな種類や選択肢がありますが、自社に合った適切なソリューションの選定が重要です。類似の製品だったとしても細かい部分で仕様が異なるため、自社の課題にもっとも合っているものを選択することがポイントです。ここでは、ソリューションの種類ごとに、選ぶ際の比較ポイントを見ていきます。
操作マニュアル作成ツールの選び方
操作マニュアル作成ツールは、ツールによってそれぞれ特徴・機能が異なります。自社の目的・課題に合った適切なタイプの作成ツールを選ぶことがポイントです。例えば、購買業務フローをステップ化して作成する場合には、専用のテンプレートやレイアウトが用意されていて、項目に沿って入力していくだけでマニュアルが作成できるタイプのツールがおすすめです。操作画面付きの手順書などを多く作成する場合には、画面キャプチャや操作説明文を自動で作成できる機能を備えたタイプが最適です。そのほかにも、エンドユーザーやサプライヤー向けの動画マニュアルを作成したい場合に適したタイプや、もっと手軽にナレッジ蓄積・共有していきたい場合などに役立つものもあります。
FAQシステムの選び方
一口にFAQシステムと言っても、そのタイプは多岐にわたるため、解決したい課題と自社に必要なプロセスを洗い出したうえで選定することが必要です。たとえば、最大限問い合わせを減らしたい場合は、検索性が重要になるため、どのような方法でより検索精度を高めようとしているのかといった観点で比較することがポイントです。キーワード検索やカテゴリーによる絞り込みなどの検索機能にとどまらず、AIがキーワードやカテゴリ候補を予測して提案するもの、FAQのコンテンツをタグで分類できるもの、コンテンツをカテゴリやジャンルに分けて深掘りしていくものなど、システムによって搭載されている検索機能はさまざまであるため、自社に適しているものを選ぶといいでしょう。また、ヘルプデスク担当者の業務効率化という観点から考えた場合、FAQコンテンツのメンテナンスの容易さや、問い合わせ管理システムなどの他のツールとの連携が重要です。したがって、「コンテンツの作成・運用を効率化するための機能が充実していること」や「他の外部ツールとの連携実績が豊富」などは重要な選定のポイントとなります。管理者側とユーザー側双方の目線に立って、使いやすくて、わかりやすいものを選ぶのが大切です。
チャットボットの選び方
無数のチャットボットツールの中から自社に合うものを選ぶことは容易ではありません。重要なのは「チャットボットに何を求めているか」という部分で、自社が抱える課題・希望に合わせて選ぶことが大切です。例えば、ヘルプデスク担当者の負担を減らしたい場合は、AIや自動学習機能などを搭載しているツールが役立ちます。ユーザー満足度を維持・向上しつつ、問い合わせ数を減らしたい場合は、チャットボットだけでなく、FAQや有人チャットをあわせて利用できる高機能タイプが便利です。実際にオン・ボーディングを行う部門や担当者の声を参考にしながら、自社に必要なソリューションや機能を見極めることがポイントです。
問い合わせ管理ツールの選び方
問い合わせ管理ツールには様々なタイプがあるため、解決したい課題と自社に必要な機能を洗い出したうえで選定することが必要です。たとえば、ユーザーからの問い合わせを効率よく管理したい場合は、マルチチャネルに対応しているか、操作性に優れているかという点で比較するとよいでしょう。メールでの問い合わせがメインの場合は、メール管理に強みのあるタイプが役立ちます。また、問い合わせ管理だけでなく、問い合わせ内容の分析にも力を入れたい場合は、システムに蓄積された情報から各種レポートを作成できる機能などに着目するとよいでしょう。アンケートなどにより問い合わせ対応の満足度を調査したいときは、分析機能が充実しているツールが便利です。
デジタルアダプションツールの選び方
デジタルアダプションツールは、大きく「自社のシステム活用支援に強みのあるタイプ」と「カスタマーサクセスの効率化」に分けられますが、各種購買関連システムのオンボーディングにおいては、前者が適切です。「自社のシステム活用支援に強みのあるタイプ」は、ユーザーのシステム利用支援に特化したタイプで、ユーザーのリテラシーに左右されず、全てのユーザーが効率よくシステムを使えるようにすることを目的にしています。面倒な定型操作を自動実行するオートフロー機能や、購買プロセスの完了率を追跡管理し、複数のアプリケーションにまたがってユーザーの行動を把握・改善できる分析機能など、搭載している機能はツールによって異なるため、自社がどんな機能を必要としているのか明確にすることが大切です。
オン・ボーディング支援ツールを提供する全国のソリューション企業一覧
操作マニュアル作成ツールを提供している企業一覧
企業名 | サービス名 |
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株式会社スタディスト | Teachme Biz |
noco株式会社 | toaster team(トースターチーム) |
コニカミノルタ株式会社 | COCOMITE |
株式会社サイバーテック | PMX |
Zendesk社 | Zendesk |
株式会社テンダ | Dojo |
株式会社ブルーポート | iTutor |
株式会社ラディアス | EZLecture |
富士通株式会社 | Axelute Document Assistant |
ピナクルズ株式会社 | tebiki |
株式会社LAMILA | VideoStep |
株式会社4COLORS | PIP-Maker |
株式会社soeasy | soeasy buddy |
TANREN株式会社 | TANREN |
FAQシステムを提供している企業一覧
企業名 | サービス名 |
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Zendesk社 | Zendesk |
テクマトリックス株式会社 | FastAnswer2 |
株式会社PKSHA Communication | OKBIZ. for FAQ |
株式会社サイシード | sAI Search |
Nota株式会社 | Helpfeel |
株式会社プラスアルファ・コンサルティング | アルファスコープ |
NTTコミュニケーションズ株式会社 | COTOHA Chat & FAQ |
セールスフォース社 | Service Cloud |
株式会社CBIT | ナレッジリング |
チャットボットを提供している企業一覧
企業名 | サービス名 |
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チャットプラス株式会社 | チャットプラス |
株式会社Zendesk | Zendesk |
株式会社サイシード | sAI Chat(サイチャット) |
カラクリ株式会社 | KARAKURI chatbot |
株式会社イクシーズラボ | CAIWA Service Viii |
ネオス株式会社 | OfficeBot |
株式会社ギブリー | PEP |
問い合わせ管理ツールを提供している企業一覧
企業名 | サービス名 |
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Zendesk社 | Zendesk |
株式会社ラクス | メールディーラー |
株式会社インゲージ | Re:lation (リレーション) |
OrangeOne株式会社 | Freshdesk Support Desk |
株式会社ネオジャパン | desknet’s CAMS |
サイボウズ株式会社 | メールワイズ |
株式会社WOW WORLD | WEBCAS mailcenter |
Onebox株式会社 | yaritori |
未創システム株式会社 | mi-Mail(エムアイ・メール) |
株式会社PR TIMES | Tayori |
デジタルアダプションツールを提供している企業一覧
企業名 | サービス名 |
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WalkMe社 | WalkMe |
テックタッチ株式会社 | Techtouch |
Pendo.io Japan株式会社 | Pendo |
NTT テクノクロス株式会社 | BizFront |
オン・ボーディングの取り組みは各種購買関連システムの定着率改善につながる
各種購買関連システムのオン・ボーディングを支援することは、個々のユーザーだけでなく、組織全体の業務効率化につながります。オン・ボーディングの効果を高めるにはさまざまな工夫が必要であり、早期の定着化を図るにはITツールやシステムの活用が欠かせません。オン・ボーディング支援のソリューションは、時代のニーズに応じてさまざまなものが提供されています。オン・ボーディングを促進し、社内外のユーザー全体の定着率を向上させる一助として、活用を検討してみてください。