購買業務フロー

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購買業務フロー

購買業務フローは、円滑な購買業務を実現する上で欠かすことのできないものであり、適切な購買管理にもつながります。無駄の省かれた最適な購買業務フローを作成するには、自社の購買業務の実態や課題を正確に把握し、不正やコンプライアンスリスク等の留意しなければならない点が数多く存在します。

購買業務フローとは

購買業務フローとは、モノやサービスの購買依頼に始まり、見積取得、発注、受入、請求処理、支払に至るまでに必要不可欠な一連のプロセスをわかりやすく示した流れのことを指します。購買業務をスムーズに遂行していくためには、それぞれの役割や手順を明確化すると共に、各担当者や責任者が詳しい流れを把握していなければなりません。また、効率的な購買業務を実現するためには、購買業務フローは無駄なく最適なものである必要があります。ただ、一口に購買業務フローと言っても、購入する品目の特性や金額、ビジネスリスクなどによって、さまざまなタイプがあります。そういった個別の事情を踏まえ、どうすればより効率的に業務を進めていけるのか考え、現場の担当者の声を聞きながらルールを作り、それに沿って業務の流れをわかりやすく示すことが重要です。

購買業務フローのパターン

企業の購買業務フローのタイプは、主に下記の通り整理できます。

購買業務フロー図

カタログ購買

カタログ購買 とは、事前にバイヤー企業とサプライヤーで対象の品目と単価を決めておき、要求者が必要な時に商品を選び、数量を確定することで発注金額が確定します。サプライヤー選定や金額などの購買条件は事前に決まっているので、購買部門による承認は必要なく、要求部門で完結する発注が可能になります。一方で、サービス品は発注時に金額が確定する固定金額ではなく、出来高払いや残業精算のパターンが多く、モノのカタログ購買と同じ仕組みで実現できるものは限られています。購買管理システムの中には、あらかじめ選定したサプライヤーや単価をカタログと同じような形で登録でき、発注時には一方的に注文を出すのではなく、バイヤーとサプライヤー間で納期や詳細仕様の確認などが行えるような機能を持っているものもあります。こういった機能はサービス品のカタログ購買と考えることができます。

契約参照購買

契約参照購買では、事前に購買部門がサプライヤー選定を行い、一定期間有効な契約を締結していくことで、個々の案件毎にサプライヤー選定や購買条件を交渉することなく、決められた契約に基づいて発注することが可能になります。カタログ購買や契約参照購買にできるだけ寄せていくことが購買の成熟度向上につながります。

都度見積購買

都度見積購買は、見積取得に手間や時間がかかり、購買担当者の負担も大きくなります。しかしながら、さまざまなものを購買しなければならない間接材 の購買では、都度見積購買のプロセスをなくすことはできないため、戦略的ソーシングの推進やカタログ購買の活用により、可能な限り件数を減らしていくことが求められます。

請求書払い&立替精算

請求書払いや立替精算は、コーポレートカードやパーチェシングカード などを活用し、購買部門を通さずに要求者が直接購入・支払いをすることができるプロセスです。具体的には、出張時の航空券や宿泊費の支払い、書籍購入、社用車のガソリン購入等、注文書発行による購入だと手間がかかり、業務に支障をきたすようなケースが対象になります。しかしながら、対象外のケースにおいても請求書払いや立替精算が行われてしまうことも多いため、そういったケースをできるだけ減らし、カタログ購買や契約参照購買に寄せていくことが必要となります。

購買業務フローを作成する際のポイント

購買業務フローを検討・作成する際は、一連のフローを同一部門だけで完結させないという権限分離の考え方を踏まえ、必要なステップごとで実施部門を分けることと、適切な承認プロセスの設定を組み合わせることが重要なポイントになります。ここでは、P2P(Procure to Pay)の一般的な購買業務フローを例に、適切な権限分離と承認プロセスを持たない場合のコンプライアンスリスクを見ていきます。一般的なP2Pの購買業務フローは以下のように分けることができます。

購買業務フロー 実施部門
1.仕様の決定 要求部門
2.サプライヤー選定・価格の決定 購買部門
3.予算承認 or 支出承認 要求部門 or 予算管理部門
4.注文書の発行 購買部門
5.受入・検収 受入部門 or 要求部門
6.請求書の発行 サプライヤー
7.支払い処理 会計部門

この業務フローは見積を取得して注文書を発行する前半部分のフローと物品・サービスを受領し、取引先から発行される請求書を突合することで、支払いにつながる(3点照合)の後半部分のフローから構成されています。中でもポイントとなるのが「権限分離」です。権限分離とは、購買業務フローごとに実施部門を分けることで、間違いや不正が起きないようにモニタリングできるようにすることです。

もし業務フロー毎に権限分離を行っていない(同一部門で業務フローを完結できてしまう)場合、購入内容に対するけん制がききにくいため、費用の水増しや架空発注といったリスクが生じやすくなります。

各購買業務フローのリスクポイント

各購買業務フローに潜在する主要なリスクとその対策をもう少し具体的に見ていきます。

注文書の発行

サプライヤー選定や発注権限を有する購買部門は、お金の絡む業務を行うため、不正の温床となりやすく、度々キックバック(発注金額の水増し)や架空請求などの不正が発生しています。一気通貫型の購買管理システム で、一連の業務を連携して処理することができる場合は、システムにより、そのような不正を防ぐことが可能になります。それができない場合は、適切な運用ルールや承認プロセスの設定が必要となります。

サービス品の受入・検収処理

サービスの受入・検収についても注意が必要です。物品等の目に見える購買品であれば、受入部門を設けることで第三者が納入の有無を確認することができますが、サービス品については受入者だけが、受入・検収処理を行うことが一般的です。しかしながら、受入者=要求者であることが多いため、権限分離ができていないことになります。このような場合、納入されていないものや発注したものと全く違うものでも検収されてしまうリスクがあります。サービス品についても、受入・検収処理を受入部門で実施しているケースもありますが、権限分離の観点からは実効性に乏しいことが多いです。現実的な対策としては、受入者=要求者となる場合は、必ず要求者の管理者の承認が必要な運用にしたり、受入れを証明するドキュメントを添付する等の管理が必要になります。さらに、それらに加えて定期的に監査や抜き打ちチェックを実施することでコンプライアンス を強化することが可能になります。

多くの企業が抱える購買業務フローの課題

日本企業の購買部門がカバーする領域は「モノ」に限定されているケースが多いです。モノとサービスを主要な品目で分類すると以下のようになります。

■モノ:
文房具・OA用紙・書籍・オフィス什器・PC・サーバー・製造設備・MRO ・試薬・研究器材等

■サービス:
弁護士・経営コンサルタント・業務委託・パッケージソフトウェア・広告・清掃・警備・派遣社員提供・出張旅費・教育研修・光熱費・設備保全・保険等

サービスの品目分類の種類はモノのそれと比べて圧倒的に多いのが分かるかと思います。また昨今、モノとサービスをセットで提供されるパターンも増えているので、今後サービスに分類される品目はさらに増えていくことが考えられます。従って、サービス品を購買の対象としていないのであれば、サービス品の特性を踏まえ、購買業務フローに適切に取り込んでいくことが重要となります。

モノとサービスの特徴には以下のような違いがあります。

■モノ
・目に見える
・仕様が明確であり、その仕様に基づき評価することが可能で
・発注時に金額の決定が可能

■サービス
・成果物として受領できるものがある場合とサービスの提供を受けるものがある。
・提供されるサービス品質の評価基準を統一化することが難しい
・発注前に金額が決定できるものと発注後に金額が決定・変更されるものがある

こういった違いがサービス品を購買業務に取り込むことの難しさに繋がっています。サービス品という大きな括りでの統一した解はなく、品目別またサプライヤーや要求部門との関係を踏まえ、地道に標準化していくことが求められます。日本の多くの企業が抱えている購買の課題の1つは、サービス購買が全社視点で統一化されていないことです。間接材購買におけるサービス品の占める割合は年々増大しており、サービス品の支出の可視化を行い、全社的な視点で管理していくことが非常に重要なのです。

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